WBC準決勝 日本対プレルトリコ。8回表、ワンナウト一、二塁。二塁ランナーはタイムリーヒットでこの試合初の得点を日本にもたらした井端。一塁にはこれまた渋いヒットで出塁した内川。
この絶好のチャンスで内川が〜〜〜。井端のスタートを切るかまえを見てスタートを切ってしまったのだ。
ほんのチョットだけ井端から目を離すのが早かったのね。
内川君、君が一番サムライらしい顔をしているのだから、またサムライジャパンで活躍してね。
自分の似たような場面を思い出した
中学三年の時の地区大会二回戦。相手は強豪、一中。六回裏、我が五中の攻撃。三対二で一中リード。一応私がテキサスヒットを打って、ワンナウト一、二塁(センターがポカ〜んとしていて、セカンドが捕ると思い込んだだけ。エラーだな〜。実際は)。
ここで私が前の二塁走者尾崎に声をかけた。
「おーい、尾崎。キャッチャー、指ケガしてるらしいから、スキあったら走れよ〜!」
「えーっ??。先生からサイン出てねージャンか?」
「ちがうちがう、スキあったら走れよっていってんだよ」
しかし歓声で私の声がよく尾崎には聞こえなかったらしい。
一球目、いきなり尾崎が三塁へ盗塁を試みたのだ(きっと、俺のこと信頼してくれていたんだね。尾崎は)。
焦った私も、一瞬躊躇したものの、慌てて走り出して二塁へ向かう。三塁はセーフ!
二塁に向かう私を見ながら、一中の二塁手が大きな声で三塁手に声をかけるが、歓声でこれまた聞こえない。
もし三塁から二塁にボールが転送されたら危ないタイミングだったが、三塁手は二塁の方は見ずに、尾崎の足下をみつめて悔しそうにしている。
ここで迎えるバッターは六番でエースの、なんと「内川」。
センター前ヒット。「ここは絶対ホームにかえるぞ」と、私も一気に三塁を回ってホームイン。逆転!
最終回(当時、中学野球は七回まで)の攻撃を内川がゼロに抑えて、五中の逆転勝利! 勢いに乗った我が五中は、翌日も準決勝、決勝と快勝して、なんと地区大会で優勝してしまったのでした。
応援団が応援歌を歌うのを聴いて、涙が止まりませんでした。はい。これ以来、妙に涙もろくなって、スポーツで感動するとすぐに涙が出てくるようになってしまいました。
なお、尾崎君は数年前に他界してしまいました。誰も知らせてくれなくて葬式にも行かなかった。ご冥福をお祈りします。
なぜ尾崎は三塁に走ったか
この文を書いていて、なぜ尾崎がサインも出ていないのに三塁に走ったかがわかってしまった。
その前に練習試合があったのだ。五中の守り。ノーアウト満塁で三塁ゴロ。私がキャッチャーの尾崎にバックホームしてワンナウト。
驚いたことに、ここで尾崎は三塁にボールを転送しようとしたのだ。私は一塁に転送するものとばかり思っていたので、ベースには入らずその場で見ていたので、尾崎は投げられずダブルプレーはできなかった。きっと、三塁でアウトにしたほうが、失点の危険性が減ると判断したのかな。
審判をやっていた一年先輩の○○さんには「だから、オメーたちは野球しらねえっつーんだよ」と言われてしまった。
尾崎は、怒ったような顔をして俺をにらみつける。こっちは、困惑してただただ黙っているだけ。
その次の回だったか、ネット裏で尾崎がおれに声をかけてきた。
「悪かったな。あれは、ファーストに投げるべきだったんだな」
多分、先輩にでも言われたんだろうな。
と、この一件があったりしたので、尾崎は私の言った「走れよ」に従ってしまったんだろう。
う〜ん。人生、何が幸いするかわからない。